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痴漢で目覚めた僕6

「あ・・・あの・・・川原悠真です・・・」
『ゆうま』とも『ゆま』とも判断付かない発音で悠真は挨拶した。今日は入学二日目、必要もないのに教壇に立たされた悠真は恥ずかしさでおかしくなりそうだった。
「ねぇ・・・あの子昨日は男子の制服着てなかったっけ?」
女子生徒のひそひそ声が聞こえ、悠真は益々顔を真っ赤にする。
「はい、みんな静かにして!」
菜穂子が一喝すると教室は水を打った様に静まりかえった。
「遅くなってごめんなさい。今日からみなさんの担任になる篠原菜穂子です。」
彼女は教室を見回した後、悠真をちらりと見る。
「遅くなったのには訳があります。」
一体何を言い出すのか悠真は気がきではなかった。
「実は、この川原ゆまさんが今朝、電車で痴漢に遭いました。」
『ええっ!?』
悠真は呆れて声も出なかった。痴漢をしたのは菜穂子本人なのである。生徒達も驚いて、女生徒達は口に手を当てているし。男子生徒の中にはニヤニヤ笑っているものもいる。
「そういうわけで、先生は駅に行っていたので遅くなりました。それから・・・」
菜穂子は教壇の隅で小さくなっている悠真を前の方に押し出すとこう言った。
「もう気付いているかもしれませんが、川原さんは本当は男の子です。」
『い、いっちゃった!』
悠真は両手を顔に当てた。教室はざわめき、先程の女生徒からは「やっぱり」という声も聞こえる。
「川原さんは訳あって、今日から女の子としてこの学校に通います。まだ二日目だから大丈夫だと思うけど、みんなも川原さんを女の子として扱ってあげて下さいね。」
再び教室内が騒がしくなる。眉をひそめる生徒、薄ら笑いを浮かべる生徒、真摯な表情で悠真を見ている生徒、反応はそれぞれだが、さすが進学校だけあって面と向かって不平をいうものはいない。
「さぁ、川原さん。これからみんなに世話になるんだから、挨拶しておきなさい。」
戸惑う悠真をよそに菜穂子は悠真の背中を叩いた。
「ちゃんとできないと退学にするわよ。」
耳打ちする菜穂子の声は、とても脅しだとは思えない迫力があった。悠真は手を強く握って言った。
「あ・・・・あの・・・僕・・・男の子ですけど・・・・お、女の子と・・して・・・お願いします・・・。」
これだけ言うのがやっとだった。
今朝男の子として家を出た筈なのに、今女の子として教室にいる。そのあまりにも信じがたい状況を、悠真はどこか夢心地で感じていた。
しかしそれが夢なんかでは無い事を思い知るのはすぐの事だった。

「なぁ、お前本当に男なのかよ?」
昼休み、悠真はさっそく柄の悪そうな男子生徒達に捕まった。進学校とはいえ少しぐらい素行の悪い生徒はいる。そしてそんな生徒達の振る舞いは普段おとなしいだけにたちが悪く陰湿だった。
「う・・・うん・・・」
もともと気が弱く人見知りの激しい悠真はそれだけ言うのが精一杯だ。
「なんか俺達だまされてるんじゃないかと思ってよぉ。」
男子生徒は悠真の胸ぐらをつかんで無理矢理立たせた。
「ほら、背も低いし、こんなに華奢な身体で・・・本当に男なのか?」
悠真より頭一つも高い男子生徒はからかうように言った。悠真は恐怖で否定することもできなかった。
「じゃあ証拠を見せてもらおうかな。」
もう一人の男子生徒が悠真のスカートを捲り上げた。
「きゃあっ!」
思わず悠真は女の子の様な悲鳴を上げる。
「『きゃあ』だってよ、ホント女みたいだコイツ!でもちゃんとついてたぜ、小さいけどな!」
悠真のショーツの膨らみを確認した男子生徒は高らかに笑った。一部の女子生徒を除いて、教室中がクスクスとした笑い声に包まれ、悠真はその場でしゃがみ込んだ。
『ど、どうして僕・・・こんな目に遭わないといけないの・・・僕・・・女の子じゃないし・・・女の子になりたくもないのに・・・』
菜穂子という運命に翻弄される悠真はその場で泣き崩れた。

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